多岐にわたる選考から選ばれた末に内定が出るのが一般的ですが、中には即日で出す企業もあります。
「即日内定=ブラック企業?」「裏には何かあるのではないか?」と考えがちですが、即日内定というだけでやばいと判断するのは早計であり、そこに至るまでの過程や理由が重要です。
今回は即日内定を出す企業の考えや理由を解説するとともに、入社するリスクや辞退の可否なども説明します。
即日内定で迷っている人や、これから就職活動をする人は参考にしてください。
【前提】即日内定を出す企業がやばいとは限らない
面接後に即日で内定を出されると嬉しい反面、大丈夫なのかと不安になると思います。
ですが、即日内定の全てが危険とは限りません。
会社として内定を出すに足りる理由があると判断し、事前に十分な審査や書類確認などの裏付けがあって即日内定を決めている場合もあるのです。
例えば、大企業の場合は複数回にわたる選考を行い、最終面接を受けている最中に内定が出されるケースもあります。
つまり、「即日内定=やばい・危険」ではなく、そこに至るまでのプロセスや理由で入社するべき企業か否かを判断するべきです。
即日内定が出る状況によってやばさは判断できる
即日内定と一口にいえども、全てがやばいと言い切れるものではありません。
即日内定がやばいか否かを決めるのは、過程や面接回数であり、このプロセスによって危険性が変わります。
状況やこれまでの経緯を参考に内定を受けるべきかどうかの判断にご活用ください。
面接1回目で即日内定が出るのはやばい
複数回面接を行った上で、企業の立場や部門、役職が異なる人がしっかりと対面・会話を行い入社するに足りる人物かどうか見極めていると言ってもいいでしょう。
1度きりの簡単な会話を交わしたのみではその人となりや考え方、バックボーンの判断はできません。
企業として長い目で会社に合う人材か否かを見極めるためには、さまざまな角度から見ることが必要になるのです。
1回の面接のみですぐに内定を出す企業の場合、十分な評価を行う時間すら惜しく、急ぎで採用しなければならない理由が隠されている可能性が高いのです。
- 常に働き手不足で、とにかく働く人の頭数を揃えるために人材が欲しい
- 誰でもいいから働いて欲しい
- 大量採用し、企業に後に合う人だけが残ればいいと考えている
以上のことから、企業として内定を軽く考えている、つまり求職者を採用することを重視していないと考えられます。
複数回の面接後に出る即日内定はリスクが低い
複数回の選考を行い最終面接の段階で即日内定となった場合、リスクが低いといえます。
複数回の選考を経て最終面接まで進めていることは、企業が時間をかけて候補者を評価しているということです。
あくまで最終面接は「候補者と行う最後の意思確認の場」と捉えていると考えられます。
最終面接を受けたその日にすぐ内定が出る場合、上記の面接1回目の即日内定とは状況や考え方が大きく異なるのです。
複数回の選考の末に最終面接で即日内定を出したということは、企業の信頼性や求職者との適合性が高く、十分に検討した上での内定といえます。
企業が即日内定を出す理由
一般的には内定まで日数がかかる印象がありますが、企業側の考えや目的からあえて即日で出している場合も考えられます。
すぐに内定が出ることについては企業側、採用者側それぞれにメリットがありますが、即日内定を出す理由として挙げられるのは以下のとおりです。
優秀な人材をその場で確保したい
優秀な人材を確保し企業の戦力として働いて欲しい、業績を伸ばしたい意図があります。
どの企業も企業発展のために優秀な人を多く確保したいものですが、知名度や求人条件などから目標人数まで候補者を集められない場合も多々あります。
同時期に採用活動を行っている場合、優秀な候補者が他社に流れてしまう可能性もなきにしもあらずです。
ライバル企業よりも早く、他社に取られないようにするために優秀な人材を確保したい思いから即日で内定を出す場合もあります。
採用決定権が高い決裁者が担当しているから
企業の規模や面接の段階から、採用決定権が高い決裁者とも言える人物が担当している場合もあります。
役員や社長など、大きな決裁権を持つ人物が直接面接に関わり候補者に会うことで、上層部も候補者の人となりを把握することができ、可否を早く出すことができるのです。
内定を出す権限を持っている人が直接関わることで採用のためのプロセスが迅速化し、早い段階で候補者に内定を出すことができるといえます。
即日内定が出る企業のイメージを広めたい
求職者の間で即日内定が出る企業として知られたいという思惑がある場合もあります。
即日内定のイメージから、採用に至るプロセスが効率的である、決断力がある企業と思われたい、ブランディングの強化が目的といえます。
その他にも、即日内定が出る企業のイメージを定着させることによって、内定が欲しい求職者からの応募を募っている意図があるのです。
大量採用を目標の1つとしている企業の場合、即日内定を大きな看板として求職者をかき集めているという見方もできるでしょう。
即日内定を出す企業に入るリスク
即日内定を出す企業の裏には、隠れた不都合な真実や不確定要素があると考えられます。
問題点を根本から解決しようとせずに、即日内定を出して採用者を増やすことのみ考えている企業で働くことは自分自身のキャリアを考えても避けるべきです。
即日で内定を出す企業に入る場合に考えられるリスクは以下のとおりです。
離職率が高く、人手不足の状況が続いている
即日内定を出す企業の場合、離職率が高い可能性があります。
職場環境が整っていない、働く人や人間関係に問題があるなど何かしらの原因があり社員が定着しないことが高い離職率の原因として挙げられるのです。
即日内定の裏に、できる限り多くの人材を確保したい、仮に退職者が出たとしてもカバーできるだけの人数を押さえておきたい意図が隠されているといえます。
高い離職率・人手不足の裏には会社としての労働環境や働き方に大きな原因が隠されている可能性があるでしょう。
社長のワンマン企業の可能性が高い
社長の権限が大きいワンマン企業の可能性が高く、トップの一声で全てが決まってしまう危険性があります。
ワンマン企業の特徴は、社長の決定が全てであることが挙げられます。
多様な考え方や反対意見、別方法を模索する道が閉ざされているリスクから、組織全体の柔軟性や経営の透明性に影響を及ぼすと考えられるのです。
組織全体の柔軟性や経営の透明性を犠牲にしている点からも、自己成長のチャンスや仕事のやりがい、働きやすさが手薄になっている恐れがあります。
将来的なキャリアパスが築けない会社で働くことになる
通常は企業も求職者も今後のキャリアや適正など総合的に考慮し、十分なすり合わせを行った上で慎重に採用の可否を決めるものです。
しかし、即日内定を出す企業は利益を重視するあまり、社員の働きやすさを軽視している傾向にあります。
結果として、離職率の高さや人手不足が目立つようになるため、個人としての働きやすさはもちろんのこと、自身のキャリアの成長や今後の進展に影響が出るでしょう。
即日内定の企業は、求職者にとって適職かどうかも分からない状態で頭数として確保しているだけであり、個人のキャリアの部分が重要視されない傾向にあります。
即日内定を受け入れた後に辞退することは可能?
即日内定が出た人の中には、嬉しさのあまりで、もしくは企業から迫られたことを理由に受け入れる場合もあるでしょう。
後から冷静に検討した結果、一度は受け入れた内定を辞退したくなることも考えられます。
即日内定を受け入れた後の辞退は不可能ではありません。
しかし、辞退可能の期日や条件があるため注意が必要です。
- 雇用契約が結ばれる前まで
- 入社予定日2週間前まで
日本では民法627条に定められているとおり、職業選択の自由が定められているからです。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
e-Gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」
法律的には可能ですが、お互い印象が良くないことは念頭に置くべきです。
自分のためにも企業のためにも、内定辞退はしないに越したことはありません。
今後いつどこで辞退した企業との繋がりがあるかもわからないため、受け入れも含めて慎重に検討すべきでしょう。
企業の評判を知るには口コミサイトが有効
実際に働いている人や関係者の声を参考に決めたい場合は、内定を受ける前に企業の評判を調査することをおすすめします。
企業の評判を知るための手段の1つとして、口コミサイトを利用してみてください。
口コミサイトは実際に内部事情を知っている関係者が書いていることがほとんどのため、公式情報では知ることのできない内情を見ることができます。
もちろん口コミの性質上、書かれている内容全てを鵜呑みにするのは危険です。
そのため、書かれているものの中でも多く見られる口コミの内容や傾向などを研究・分析した上で適切に解釈するべきでしょう。
口コミサイトの中でも掲載数や使いやすさからおすすめのサイトと口コミ数は以下のとおりです。
- 転職会議
- OpenWork
- ライトハウス
いずれも多くの利用者がいる、口コミ件数や掲載情報のわかりやすさもトップクラスの口コミサイトです。
1つの口コミサイトのみならず、いくつかを見比べて分析することをおすすめします。
即日内定系のイベントには注意が必要
即日内定系のイベントは名前のとおり、その日のうちに内定を出すことを目的としています。
しかし、イベントで顔を出し、少し話しただけで仕事の向き不向きや適正が分かることはまずありません。
即日内定系のイベントに参加している企業の多くは以下の思惑があり、人集めのために動いていることがほとんどです。
- 誰でもいいからとにかく人手が欲しい
- なかなか応募が集まらない(給与、評判、福利厚生などが原因で)が、人を集めなければならない
- 社員は使い捨てで替えはきくと考えている。採用後に合わないことが分かれば辞めてもらっても構わない
イベントで少し話をしたくらいで内定を出すのは判断がはやすぎます。
その背景には人手不足や離職率の高さなど、なんらかの事情を抱えている可能性が非常に大きいのです。
内定欲しさに自らリスクがある企業が参加していると考えられるイベントに飛び込んでいくのは危険と考えられます。
今後の人生やライフプランを考えた上では、リスクがあまりにも大きすぎるため、注意が必要です。
即日内定を出す企業に関するよくある質問
- その場で内定を出す企業は怪しいのですが…
-
即日内定が出る背景にはさまざまな理由や事情があるため、全てのケースが怪しいとは限りません。
即日内定が出た背景や選考回数などを考察した上で判断するべきです。
即日内定でも怪しくはないパターンと怪しいパターンのまとめは以下のとおりで
即日内定が怪しくないパターン 即日内定が怪しいパターン ・すでに複数回選考を重ねている
・最終面接の場で裁量権をもった立場の人から内定が出た・即日内定系のイベントで内定が出た
・1回目の面接で即日内定が出たちなみに、就職についての情報やデータをまとめた就職みらい研究所の研究白書2023によると、面接回数の平均は2.4回です。
そのため、即日の1回で内定が出る場合要注意という考え方もできるため、本当にここで働くのか、働きやすい環境が整っているのかなど納得できるまで検討した上で内定を受けるか否かを決めるべきでしょう。
- 即日内定を保留にすることはできますか?
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他社での選考が途中である、第一志望の企業の選考が終わっていないなどさまざまな事情で即日で出た内定を保留にしたい場合、理由を伝えることで待ってもらえることが多いでしょう。
即日内定を保留にする場合に企業に伝えるべきことは以下のとおりです。
- 内定を保留にしたい理由
- 可能であれば即日内定を受けたい意思はあること
- 内定を出されたことに対しての感謝の気持ち
家族との相談や他社の選考状況などを考慮した場合、1週間程度であれば内定の返事を待ってもらえる可能性が高いといえます。
しかし保留期間が長すぎる場合、企業から志望度が低い、他社に行くと判断される場合もあるでしょう。
もしも保留にする場合は期日や理由も含め、誤解や失礼のないように細心の注意をはらってください。
- 内定を保留にした場合、内定が取り消しになることはありますか?
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企業側から保留にしたことを理由に内定取り消しを伝えられる可能性があります。
企業側で他の人材を採用したい思惑がある場合、数日間の返事を待っていられない事情がある際に、内定取り消しとなるリスクがあるのです。内定を保留にする場合は、保留にすることで得られる時間とメリット、仮に辞退と扱われ内定取り消しになることへの後悔がないかを検討するべきでしょう。
- 内定承諾後の辞退は可能ですか?
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内定とは正式に雇用契約が結ばれる前段階であり、採用選考を経て労働に関係する条件などに合意した状態を指します。
内定を一度承諾した後で採用者側の都合で辞退することは法律上は可能ですが、一定の条件があります。
内定承諾後の辞退をする場合、「雇用契約が結ばれる前まで」「入社予定日2週間前まで」と期限が決められているためいつまでに企業に伝えるか気をつけなければなりません。
もしも辞退する場合、企業への連絡は失礼のないように、早めに行うべきです。
社会人の最低限のマナーとして、失礼のないように担当者の勤務時間内に、正しい日本語で感謝と謝罪の意思を持って辞退の連絡をしてください。
- ホワイト企業でも即日内定を出すことがありますか?
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複数回の選考を通じて適性や能力を十分に判断し、慎重に検討を重ねた結果内定を出すか否かを決めるのが一般的です。
1回の面接で人となりや能力を十分に熟知することは不可能といえます。
即日内定は企業・採用者共にミスマッチの危険があるため、通常のホワイト企業では行われません。
複数回面接を重ねた末に、他社に流れないように採用前提とされる最終面接の場で即日内定を伝えることも場合によってはあります。
しかし「たった1回の面接の場で即日内定」が行われることは考えにくいでしょう。
1回目の面接で即日内定が出た場合、ホワイト企業の可能性が低いといえます。
即日内定はその場で受け入れず、入社の検討をしよう
- 企業側の思惑や考え方があるため、即日内定=危険とは言い切れない
- 「1回目の面接で即日内定」「即日内定系イベント参加で内定」「内定をその場で受けるよう強制される」は人員確保のために労働者を使い捨てと考える、ブラック企業の可能性が高い
- 内定を受けるか否かは今後のキャリアプランや生活、プライベートとのバランスなどを十分に考慮した上で慎重に検討すべき
内定が出ると自分自身が認められた、すぐにでも欲しい人材と思われたと嬉しくなる気持ちがありますが、企業側の考えや即日内定が出た状況によっても異なります。
即日内定をその場で受けるのではなく、一旦持ち帰り、その企業で働いているイメージも含めてよく検討するべきです。
よりよく働くためには働きやすい環境で、自分の適正や能力に合った仕事をすることが必要といえますが、面接は企業と求職者の認識のすり合わせの場でもあります。
認識のずれから、入社後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、企業の評判や社内文化、離職率も含めて情報収集は必須です。
最終的に自身のキャリアパスとマッチする企業を選ぶためにも、納得できるまで検討して内定を受けるか否か決めるべきでしょう。