ファクタリングで取り立てされることはある?
ファクタリングで取り立てが起きたらどうしたらいい?
ファクタリングに関するこのような悩みを解決します。
ファクタリングは、売掛債権の売却によりスピーディーな現金化が可能な資金調達方法です。
しかし、貸金業法の適用外であることを理由に、厳しい取り立てや高額な手数料を請求してくる悪徳業者も存在します。
本記事では、ファクタリングの悪徳業者に関する見極め方や回避方法について解説します。
この記事を読めば、ファクタリングで取り立てされることがあるかがわかりトラブルに対処できる力が身につくので、ぜひ最後までご覧ください。

弁護士 田代隼一郎
有岡・田代法律事務所
2012年に弁護士登録。福岡市内で弁護士業務に励みながら、弁護士経験の中で培ってきた知識・経験を広く発信しており、企業・行政機関・士業向けの講演、TV・新聞・YouTube などで広く活躍している。
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ファクタリングの取り立て、法的な取り扱いは?
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却して売掛先からの入金前に資金を調達する仕組みです。
法律上は貸金契約ではなく債権譲渡契約で、お金の貸し借りが発生しないため貸金業法は適用されません。
ファクタリングは貸金業法が適用されないことから貸金業の登録が不要で、法的に取り立ての制限がないことに注意しましょう。
このようにファクタリング事業に参入するハードルは低いため悪徳なファクタリング会社も存在し、時には厳しい取り立てを行う場合があります。
取り立てに発展するケース
ファクタリングは債権譲渡契約のため、売掛債権をファクタリング会社に売却して売掛金の支払いが完了した時点で取引は終了します。
ただし、以下のように取り立てに発展するケースがあることを押さえておきましょう。
- 売掛債権の回収にファクタリング利用者が関与するケース
- 売掛金を回収できない場合の金銭的な補償などを利用者が負担するケース
- 売掛債権の額面と売却金額がかけ離れているケース
- 売買の対象が給与債権(実質的に給与の譲渡)のケース
たとえば、売掛債権の額面と売却金額がかけ離れているケースでは、実質的には利用者に対する貸付けとして違法と判断されやすいです。
また、給与の譲渡は法律上認められていないため、売買の対象が給与債権(労働者が勤務先から給与をもらえる権利)であるファクタリングは大部分が違法と判断されます。
一般的なファクタリング会社からの取り立ての流れ
一般的なファクタリング会社からの取り立ての流れは、次の3ステップです。
これらの流れを知っておくことで、優良なファクタリング会社は貸金業法に違反するような取り立てを基本的に行わないことがわかります。
これらの基本的な流れを理解し、必要な知識を先行して押さえておきましょう。
1.回収相手の調査
売掛金の支払いが滞っていることが判明した場合、ファクタリング会社はまず回収相手の調査を行います。
ファクタリングで支払いが滞る原因は次の2つです。
- 売掛先が売掛金の支払いをできていない
- 利用者が売掛先から入金された売掛金を支払いしていない
ファクタリング会社は売掛先または利用者から売掛金を回収するため、取り立て対象が誰であるかを確認します。
売掛先が売掛金の支払いをできていない場合は、ファクタリング会社は売掛先に対して債権譲渡通知を行う場合が多いです。
一方、利用者が支払いしていないケースでは、取り立て対象が売掛先から利用者へ移行します。
2.支払督促や訴訟
売掛先の支払い状況に問題がなく利用者が売掛金を払えていない場合、債務不履行となりファクタリング会社は利用者に対して任意で支払いを求めます。
電話やメールなどによる任意の支払いに応じないと、ファクタリング会社が利用者に対して支払督促や訴訟を行うケースも多々あります。
支払督促がなされた場合、利用者が書類の受け取り後2週間以内に異議申し立てをしなければ、ファクタリング会社が財産を差し押えることも可能になります。
一方、利用者が異議を申し立てると、訴訟へ移行します。
3.強制執行
支払督促判決(訴訟の結果)が確定しても利用者が支払いしなければ、ファクタリング会社は強制執行を行うことができます。
たとえば、強制執行により利用者の銀行口座・不動産・保険などが差し押さえられて、以下のような回収が実行されることもあります。
強制執行の例 | 内容 |
---|---|
銀行口座の差し押え | 銀行の預金残高から代金が回収される |
不動産の差し押え | 不動産を競売にかけて売却金が回収される |
保険の差し押え | 契約中の保険が強制的に解約となり解約返戻金として回収される |
強制執行が行われると、自社の財産を失うことに加えて社会的信用も失墜して倒産に繋がるリスクがあることに注意してください。
例えば、取引先に対する売掛金を差押えられることで、取引先に信用不安を持たれてしまうことがあります。
また、銀行口座の差押えなども予告なく実行されるため、資金繰りに窮してしまうこともあります。
そのため、支払督促や訴訟をされてしまった場合は、ぜひ早い段階で弁護士にご相談しましょう。
【要注意】悪徳ファクタリング会社の取り立て
ファクタリング会社の中には、残念ながら悪徳な業者もいます。
悪徳ファクタリング会社の注意すべき取り立て方法は、次のとおりです。
これらの内容に関する法的な境界線や違法となる根拠について解説するので、対策とあわせてぜひ押さえておいてください。
それぞれの内容について、以下で順番に見ていきましょう。
何度も電話をしてくる
悪徳ファクタリング会社は、売掛金の回収にあたって何度も電話をかけてくるのが特徴です。
また、債務者に対して決められた時間に電話するだけであれば許されるのかというと、そうでもありません。
電話を明確に拒否している債務者に対して、執拗に多数回の電話をかけるのも違法となることがあります。
1日に何度も電話がかかってくる場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
脅迫まがいのことをしてくる
悪徳ファクタリング会社は、脅迫まがいのことをしてくることもあります。
たとえば、売掛金の支払いが遅れた場合に「払えないなら代わりに家族に払ってもらう」「弁護士や警察に相談したら許さない」などと言われる可能性があります。
債務者に害を加える旨を告知するようなケースでは、違法となることもあり得ると認識しておきましょう。
ファクタリング会社から脅迫まがいのことをされた場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
職場に無断で訪問してくる
悪徳ファクタリング会社は、職場に無断で訪問してくることもあり得ます。
債権の取り立てのために債務者の職場を訪問するのは、そもそも債務者の名誉毀損や職場の業務妨害に当たりうるものです。
そのため、多くは不法行為(民法709条)に基づく損害賠償の対象になり、悪質な場合には以下に該当して処罰される場合もあります。
- 刑法(130条・230条・233条など)
- 都道府県の条例(迷惑防止条例による嫌がらせ規制等)違反
また、貸金業法では訪問場所も制限されており、貸金業者であれば正当な理由のない職場訪問などは違法とされることを押さえておきましょう。
悪徳ファクタリング会社が無断で職場に訪問してきたら、すぐに弁護士へ相談するのがおすすめです。
親族への迷惑行為
悪徳ファクタリング会社は、親族へ迷惑行為をしてくるのも特徴の一つです。
たとえば、支払い義務がない親族に対して電話したり自宅を訪問したりすることで、利用者は罪悪感により精神的に追い込まれてしまいます。
本来であれば、ファクタリング会社には保証人でもない親族に請求する権限はありません。
そのため、そのようなことをする会社は悪質ですので、すぐに私たち専門家にご相談ください。
逆に、ファクタリング会社からの嫌がらせに耐えられずに一部でも支払ってしまう行為は、ますます嫌がらせを助長することになりますので、お勧めしません。
親族への迷惑行為が判明した場合、弁護士や警察に早い段階で相談するようにしましょう。
悪質なファクタリングの業者の特徴については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

ファクタリングで取り立てを回避する方法
ファクタリングで取り立てを回避する方法は、次の6つです。
これらの方法を知っておくことで、ファクタリングで取り立てを効率的に回避できます。
それぞれの内容の詳細について、以下で順番に見ていきましょう。
キャッシュフローの改善
ファクタリングで取り立てを回避するにあたって、長期的な視点でキャッシュフローを改善すべきといえます。
なぜなら、キャッシュフローを改善することで資金繰りが良くなり、支払い遅延してしまう確率を減らせるからです。
また、ファクタリングを多く利用するほど悪徳ファクタリング業者に出会ってしまうリスクも増えるため、注意が必要です。
長期的な視点でキャッシュフローを改善し、支払い遅延を防止しましょう。
ファクタリングについて詳しく調べる
ファクタリングの取り立て回避には、ファクタリングについて詳しく調べるのも有効です。
ファクタリングには、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
売り上げをすぐに現金化できる 返済負担のない資金調達ができる 2社間ファクタリングなら売掛先に知られない 貸借対照表に影響がない | 手数料が高め 3社間ファクタリングは売掛先の承認が必須 悪徳業者が存在する |
スピーディーに現金化できて返済負担がないメリットがある一方で、手数料が高く悪徳業者が存在するのがデメリットです。
これらのメリットとデメリットを把握することで、自分の事業にとっての良し悪しを事前に判断しましょう。
他の資金調達方法を考える
ファクタリングで取り立てを回避するにあたって、他の資金調達方法を考えるのも有効といえます。
なぜなら、事業によってはファクタリング以外の資金調達が合っている可能性もあるからです。
たとえば、ファクタリングと銀行融資には以下のような違いがあります。
項 目 | ファクタリング | 銀行融資 |
---|---|---|
資金調達方法 | 売掛債権の売却 | 借入 |
返済負担 | なし | あり |
保証人や担保 | 不要 | 必要 |
現金化のスピード | 最短即日 | 数週間〜1ヶ月 |
必要書類 | 本人確認書類 売掛債権の書類 | 本人確認書類 印鑑証明書 確定申告書 事業関連書類 |
申し込み・審査・契約 | オンラインなど | 窓口・電話・対面 |
手数料の相場(年利) | 24〜216% | 1〜15% |
銀行融資などと比較し、自社に合った資金調達方法を含めて検討しましょう。
ファクタリングと融資の違いについてより詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

安全なファクタリング会社を見極める
ファクタリングで取り立てを回避するにあたって、安全なファクタリング会社を見極めるのも重要です。
具体的には、ファクタリング会社の実績や利用者の評判・口コミを確認することをおすすめします。
悪徳ファクタリング業者を利用しないよう、事前に業者情報を十分に調べた上で慎重に判断しましょう。
3社間ファクタリングで契約する
ファクタリングで取り立てを回避したいなら、3社間ファクタリングで契約することをおすすめします。
その理由は、利用者とファクタリング会社に加えて売掛先も登場する3社間ファクタリングでは、売掛金が売掛先からファクタリング会社へ直接支払われる運用だからです。
ただし、3社間ファクタリングでは2社間と比較して、契約の段階で売掛先の承認が必要で現金化のスピードが遅めなことに注意しましょう。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの詳しい違いや選ぶ際の注意点は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

契約内容をしっかり確認する
ファクタリングで取り立てを回避したい場合、契約内容をしっかり確認しましょう。
なぜなら、契約内容の確認が不十分だと後々トラブルに繋がる可能性があるからです。
具体的には、以下の点について注意してください。
- 契約内容が「債権譲渡契約」であるか
- 手数料が相場の範囲内か
- 担保や保証人が不要か
- 償還請求権がないか
ファクタリングは債権譲渡契約のため、担保や保証人の設定を求められることはありません。
また、ファクタリング手数料の相場は2〜18%のため、相場を大幅に上回る業者は悪徳業者の可能性が高いです。
契約前に契約書の内容を慎重に確認し、失敗・後悔しないようにしましょう。
契約書の内容の確認段階から、弁護士に相談しておくと安心です。
ファクタリングの償還請求権について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

ファクタリングの取り立ては弁護士に相談すべき?
ファクタリングが適法か違法かを判断するのは、簡単ではありません。
弁護士に相談すべきケースは以下のとおりです。
- 何度も電話をしてくる
- 脅迫まがいのことをしてくる
- 職場に無断で訪問してくる
- 親族への迷惑行為をしてくる
違法なファクタリングの可能性があれば、まずは弁護士に相談し裁判などで返済義務がないことを明らかにしましょう。
仮に適法なファクタリングだった場合、弁護士は相手との交渉窓口になったり債務を整理したりすることで貢献してくれます。
主な相談先は次のとおりです。
相談先 | 内容 |
---|---|
弁護士 | 「日本弁護士連合会」の弁護士検索サイトがおすすめ |
警察 | 東京都にお住まいの場合:警視庁の相談ホットラインまたは東京各地の警察署 東京以外の方:お住まいの都道府県を入れて「〇〇県警察」と検索 |
消費生活センター | 各地の消費生活センターへ直接相談 |
自分で安易に判断しないで、早い段階での弁護士などへ相談するのがおすすめです。
ファクタリングの取り立てに関するよくある質問
ファクタリングの取り立てに関するよくある質問は、次の3つです。
それぞれの質問について以下で順番に解説します。
【まとめ】悪徳ファクタリングで取り立てされたらすぐに弁護士へ相談しよう!
本記事では、ファクタリングの悪徳業者に関する見極め方や回避方法について解説しました。
ファクタリングは債権譲渡契約で貸金業法の適用外のため、厳しい取り立てや高額な手数料を請求してくる悪徳業者が存在します。
悪徳ファクタリング会社から取り立てされたら、自分で安易に判断しないで弁護士へ相談して対処するのがおすすめです。

ファクタリングonline 編集部
株式会社ピコラボ
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