再配達荷物を削減しよう!現状の課題や利用者にできる取り組みを解説
近年、EC市場の急成長やライフスタイルの多様化に伴い「再配達荷物」が重大な社会問題となっています。
再配達荷物の発生に伴う、運送会社の生産性の低下や環境負荷などの社会的損失が懸念されており、問題の早急な解決が求められています。
さらに、2024年よりトラックドライバーの働き方に関する法改正が適用され、再配達荷物の問題とあわせて、さらなるドライバー不足が不安視されています。
このような状況を改善するため、国土交通省では再配達削減に向けた取り組みを強化する一方で、利用者である私たち1人ひとりの意識改革も不可欠です。
そこで本記事では、再配達荷物の現状と課題について、以下の内容を解説します。
- 再配達荷物の現状
- 再配達荷物はなぜ起こるか
- 再配達荷物削減のためにできること
ぜひ記事の内容を参考に、再配達荷物に対する理解を深め「自分にはどんな取り組みができるか」検討してみましょう。
再配達荷物の現状
国土交通省の調査によると、令和5年10月時点で宅配便の再配達率は「約11.1%」という結果が報告されています。
令和5年10月 (調査期間:R5/10/1~10/31) | |||
総数 | 再配達数 | 再配達率 | |
都市部 | 819,250 | 98,843 | 12.1% |
都市部近郊 | 1,522,145 | 163,030 | 10.7% |
地方 | 149,771 | 13,794 | 9.2% |
総計 | 2,491,166 | 275,667 | 11.1% |
宅配便全体の約1割が再配達を行っている状態となり「労働力」や「環境への負荷」に換算すると、以下の社会的損失に相当するといわれています。
- 労働生産性の低下:再配達の割合は、年間約6万人のドライバーの労働力に相当
- 環境への負荷:再配達のトラックから排出されるCO2量は、年間約25.4万トン
さらに、2024年の法改正により「トラックドライバーの時間外労働」が規制されるため、再配達荷物の問題とあわせて、配送に関わる人手不足の深刻化が懸念されています。
このまま問題が解決せずに進行すると、現状の物流サービスを成立できなくなり、利用者に対しても「利便性の低下」や「再配達の有償化」などデメリットが生じる可能性があります。
「再配達荷物」の削減は、運送業者・利用者どちらにとっても解決が急がれる課題です。
再配達荷物はなぜ起こるか
再配達荷物の問題を考えるうえで、まずはその原因を理解することが大切です。
主な原因として、以下の4つが挙げられます。
- 宅配便取扱個数の増加
- 日時指定の活用不足
- 簡単に再配達を依頼できる
- 働き方やライフスタイルの多様化
それぞれ詳しくみていきましょう。
宅配便取扱個数の増加
国土交通省の調査によると、令和4年度時点で年間の宅配便取扱個数は「約50.6億個」となり、直近の5年間で約10.9億個(+約29.1%)増加していることが明らかになりました。
近年の「ライフスタイルの多様化」や「EC市場の拡大」が要因と考えられており、今後も右肩上がりで推移することが予想されます。
ネットで誰でも小さな荷物から注文可能となり、配送の「小口化」が進んだことも、再配達増加の原因として考えられています。
日時指定の活用不足
国土交通省が行った「物流に対する消費者意識に関するアンケート」によると、再配達を依頼した理由の内訳は、以下の結果となりました。
「配達日時が指定できない商品だった(1位/32.3%)」「配達に来ることを知らなかった(2位/22.2%)」の2つの回答が全体の半数を占めています。
全体を通して「配達を忘れていた」「意識したことがなかった」との回答も散見されるため、利用者側の受け取りへの意識不足が考えられます。
自分が注文した商品に対しては、日時指定を活用して確実な受け取りを心がける必要があります。
簡単に再配達を依頼できる
現在では、運送会社のホームページやSNS、電話等で簡単に再配達依頼が可能になりました。
利用者にとっては、無料で簡単に再配達を依頼できるため便利なサービスといえます。
一方で、気軽に依頼できるがゆえに、ドライバーの手間や負担を考慮せず、何度も申し込む利用者がいる点も見逃せません。
再配達荷物が発生しないよう受け取り方法を工夫し、依頼する場合でも1回で済むように意識しましょう。
働き方やライフスタイルの多様化
再配達が生じる原因の1つに、現代における働き方やライフスタイルの多様化が挙げられます。
近年では「フレックスタイム制」を導入する企業も増え、働く場所や時間帯の自由度が高まりつつあります。
一方で、宅配便の配送時間帯に大きな変化はないため、働き方の多様化とすれ違いが発生し、再配達荷物が増加する要因となっています。
さらに、共働き世帯も年々増加しており、配達時間帯に「夫婦ともに不在」のケースが発生しています。
再配達荷物削減のためにできること
再配達荷物の削減には運送会社の努力だけでは限界があり、私たち利用者側の改善に向けた取り組みが不可欠です。
利用者が取り組める改善策について、以下の4点を解説します。
- 日時指定を有効活用する
- まとめ買いで配送回数を減らす
- 運送会社の連絡ツールを活用する
- 対面以外の受け取り方法を活用する
順番にみていきましょう。
日時指定を有効活用する
日時指定が可能な商品の場合、以下の点を意識して積極的に活用しましょう。
- 自分が確実に受け取れる時間帯を指定
- 相手が受け取れる日時を確認してから依頼する
受け取る場合・送る場合どちらにおいても、確実に受け取れる日時の指定が重要です。
日時指定の有効活用により、再配達荷物の発生を根本から削減することができます。
まとめ買いで配送回数を減らす
日用品を通販で定期購入されている方は「週1回、月1回」など、まとめ買いを意識してみましょう。
運送会社やトラックドライバーにとって、たとえ小さな荷物でも1件分の配送として対応が必要になります。
まとめ買いにより、一戸あたりの配送回数を減らせるため、定期的に購入するものはリスト化し、必要なタイミングで購入するよう心がけましょう。
運送会社の連絡ツールを活用する
運送会社ではメールやSNSから、配達時間の通知や受取日時の変更が可能です。
再配達を依頼する理由の多くが「配達があると知らなかった」とするケースが多いため、事前にツールを登録しておけば、受取忘れを未然に防ぐことができます。
万が一急用が入った際も、ツール上で簡単に時間帯を変更できますので、確実に受け取りができるように有効活用してみましょう。
対面以外の受け取り方法を活用する
仕事や用事で配送時間内の受け取りが難しい場合は、対面以外の方法も活用しましょう。
具体的には、以下の受け取り方法があります。
- 宅配ボックス・置き配
- コンビニ受け取り
- 駅や街中の宅配ロッカー
上記を活用すると、不在時や仕事帰りでも受取可能となり、再配達荷物の発生を減らすことができます。
再配達荷物の削減に向けて1人ひとりができることに取り組もう!
本記事では再配達荷物の現状と課題、削減に向けて利用者ができる取り組みについて解説しました。
今回のポイントは以下のとおりです。
- ECの発達により、再配達件数が急速に拡大している
- 再配達問題は労働力・環境面への社会的損失をもたらす
- 再配達削減には、時間指定や置き配など利用者側の協力が重要
問題の早急な解決には、運送会社やトラックドライバー・利用者の双方の協力が不可欠です。
再配達荷物の削減に向けて、まずは1人ひとりができることから取り組んでいきましょう。