バーチャルオフィスは違法?怪しい業者の見分け方と優良業者の選び方
起業する際、一度は考えるサービスがバーチャルオフィス。
しかし、バーチャルオフィスは比較的新しいサービスのため、怪しいと感じる方もいるのではないでしょうか。
当記事では、様々な業種の起業をサポートしている筆者がバーチャルオフィスの合法性や選び方、利用に関する注意点を解説します。
バーチャルオフィスは違法なのか?
バーチャルオフィスに違法性はありません。
バーチャルオフィスの住所は法人登記や特定商取引法に基づく表記としての利用が法律で認められています。
むしろ、バーチャルオフィスを利用した詐欺行為が違法となります。
そのため、利用する際はサポート体制の充実度や口コミなどの信頼性を確認することが重要です。
信頼性のないバーチャルオフィスを利用すると、個人情報の流出といったトラブルにも巻き込まれる可能性があります。
様々な点を考慮し、安心して利用できるバーチャルオフィスを見つけましょう。
バーチャルオフィスが違法ではない理由
バーチャルオフィスが違法ではない理由は以下の2点です。
- 法人登記での住所登録に制限はない
- 特定商取引法が認められているため
法人登記での住所登録に制限はない
法人登記の際、バーチャルオフィスの住所を使用しても問題ありません。
したがって、住所はバーチャルオフィスであっても実際の業務は自宅で行っても問題ありません。
ただし、郵送物は記載した住所に届くため、必要な郵便物は取りに行くか転送してもらう必要があります。
特定商取引法が認められているため
特定商取引法でも、バーチャルオフィスの住所の利用は認められています。
郵便物の受取や本人との連絡が可能であれば、バーチャルオフィスでも問題ありません。
ちなみに、消費者庁は以下の見解を示しています。
「住所」については、法人及び個人事業者の別を問わず、現に活動している住所(法人にあっては、通常は登記簿上の住所と同じと思われる。)を正確に表示する必要がある。
いわゆるレンタルオフィス等であっても、現に活動している住所といえる限り、法の要請を満たすと考えられる。引用元:第3節 通信販売
バーチャルオフィスが怪しいと言われる理由
バーチャルオフィスが怪しいと言われる理由は以下の4つです。
- バーチャルオフィスが一般的に認知されていない
- 詐欺行為や悪徳商法に利用されることも
- 事業者の実態が不透明
- 安価な料金による信頼性の低さ
バーチャルオフィスが一般的に認知されていない
バーチャルオフィスは、まだ多くの人にとって馴染みがありません。
そのため、利用すること自体、不安を感じる人も少なからずいるでしょう。
現代はインターネットが普及・発展し、パソコン1台あれば起業できる時代です。
その現状にマッチした新サービスとして、バーチャルオフィスが誕生したので誤解や偏見が生じやすいのも無理はありません。
詐欺行為や悪徳商法に利用されることも
バーチャルオフィスを利用した詐欺行為や悪徳商法もあります。
そのため、バーチャルオフィスは怪しいという印象があるのも無理ありません。
国家公安委員会の令和5年犯罪収益移転危険度調査書によると、以下の内容があります。
法人がマネー・ローンダリング等に悪用されることを防止するためには、法人の実質的支配者を明らかにして、法人の透明性と資金の追跡可能性を確保することが重要である。この点、我が国においては、法人等のために、いわゆる「住所貸し」といわれる事業上の住所や設備、通信手段及び管理上の住所を提供するレンタルオフィス・バーチャルオフィス事業者が存在する。その中には郵便物受取サービス、電話受付代行サービス、電話転送サービス等の付帯サービスを提供している事業者もあり、これらのサービスを悪用することにより、法人等は、実際には占有していない場所の住所や電話番号を自己のものとして外部に表示することができるほか、法人登記を用い事業の信用、業務規模等に関し架空の又は誇張された外観を作出することが可能となる。
令和2年から令和4年までの間に検挙されたマネー・ローンダリング事犯のうち、実体のない又は不透明な法人が悪用された件数は36件である。このうち、令和4年中における実体のない又は不透明な法人が悪用された件数は6件あり、悪用された法人数は11法人であった。この悪用された法人を形態別にみると、株式会社(特例有限会社を含む。)9法人、合同会社1法人、その他1法人となっている。
バーチャルオフィスを利用する際には、慎重にサービスを選ぶことが必要です。
事業者の実態が不透明
バーチャルオフィスを運営する事業者の中には、実態が不透明なこともあります。
公式サイトがないため、事業者自身の事業内容や会社規模が明確でない場合があります。
当然、会社としての実績がなければ、倒産や事業撤退のリスクも考えられます。
万が一、事業者が倒産した場合は移転手続きなどの面倒な作業を行わなければいけません。
倒産や事業撤退というリスクがバーチャルオフィスの信頼性を疑問視する原因です。
安価な料金による信頼性の低さ
バーチャルオフィスは、実際にオフィスを借りるよりも比較的安く借りられます。
都内でも月額数千円で借りられる上、コワーキングスペースなどサービスが充実している業者でも、月額1万円程度で済みます。
ただし、相場よりも利用料金が極端に安い場合は、サービス品質や信頼性を疑ったほうがいいでしょう。
過去に犯罪に使われた事例や、同一の住所で風俗関連の業者が入っている可能性があります。
相場よりも極端に安ければ、まずは適切なサポートを受けられるかなどの調査が必要となります。
過去にあったバーチャルオフィスのトラブル
過去にバーチャルオフィスは様々なトラブルが報告されているため、契約時には注意しましょう。
請求書などの郵便物はバーチャルオフィスに一度届いてから転送されるため、誤配や遅配が発生します。
そのため、請求書の支払い期限に間に合わないといったトラブルが起こる可能性があります。
また、バーチャルオフィス運営会社の倒産や事業撤退も問題です。
倒産や事業撤退が発生した場合、住所変更や登記変更などの手続きが発生します。
さらに前述の通り、バーチャルオフィスが詐欺や違法行為に悪用されるケースも少なくありません。
バーチャルオフィスを利用する際には、十分に調査を行ったうえで利用しましょう。
怪しいバーチャルオフィスの特徴
怪しいバーチャルオフィスの特徴は以下4つです。
- 口コミやレビューがほとんどない
- 利用料金が異常に安い
- 運営会社の詳細が不明確
- 過去に詐欺や法的トラブルに巻き込まれた報告
口コミやレビューがほとんどない
信頼性の高いバーチャルオフィスには、多くの口コミやレビューが存在します。
口コミやレビューがないバーチャルオフィスは、信頼性を疑ったほうがいいでしょう。
口コミやレビューはGoogleマップや専門のポータルサイトで確認できます。
口コミやレビューを確認し、サービス品質など総合的に判断することが重要です。
利用料金が異常に安い
バーチャルオフィスの利用料金が異常に安い場合、サービスの質や信頼性に問題がある可能性があります。
一般的なバーチャルオフィスの相場は、最低でも月に1,500円〜10,000円程度です。
相場より安い料金設定の場合、郵便物は自分で取りにいったり、そもそも登記先住所として利用できなかったりする可能性があります。
そのため、料金設定が妥当かつ信頼性の高いバーチャルオフィスを選ぶことが重要です。
運営会社の詳細が不明確
信頼できるバーチャルオフィス業者は、会社情報を公式サイトに記載しています。
バーチャルオフィスの運営情報として、以下の情報を確認するのが重要です。
- 会社の正式名称
- 所在地
- 代表者や経営陣
- 会社の設立年
- 明確な事業内容
- 連絡先情報(電話番号、メールアドレス)
- プライバシーポリシーや利用規約
情報がない場合はサービスの信頼性や継続性を疑いましょう。
なお、情報は画像ではなくテキストとして掲載されているかも確認します。
過去に詐欺や法的トラブルに巻き込まれた報告
過去に詐欺や法的トラブルに巻き込まれた報告があるバーチャルオフィスには、注意しましょう。
詐欺や法的トラブルに巻き込まれた報告がある場合、サービスとしての信頼性があるかが疑問です。
Google検索などで検討中のサービス名+詐欺やトラブルなどと検索し、過去の評判を確認します。
もし、カスタマーサポートがあれば直接聞くのも一つの手です。
バーチャルオフィスを選ぶときのポイント
バーチャルオフィスを選ぶときのポイントは以下の4点です。
- 信頼性と評判
- サービス内容
- 料金と契約内容
- サポート体制
信頼性と評判
バーチャルオフィスを選ぶ際、信頼性と評判は非常に重要です。
利用者の口コミやレビューを確認できれば、サービスの実態を把握できます。
特に、郵便物の取り扱いや問い合わせ対応に関する評価は確認しておきましょう。
たとえ、検討中のバーチャルオフィスが安くても、起業当初は大きなコストはかけられません。
安いプランでも提供できる郵便物の取り扱いの実態は把握しておきましょう。
また、口コミはGoogleマップの情報だけでなく、SNSなど他の情報源とあわせて比較検討することが重要です。
サービス内容
バーチャルオフィスの主なサービス内容は以下の通りです。
- 住所の利用
- 郵便物の転送
- 会議室の利用
バーチャルオフィスの住所は法人登記や郵便物の受け取りに利用可能です。
郵便物転送サービスを使えば、郵便物を転送したり内容をスキャンしてメールで送信したりできます。
また、サービスによっては会議室も利用できるため、必要に応じて商談や打ち合わせに利用できます。
料金と契約内容
バーチャルオフィスを利用する際は、料金と契約内容はよく確認しておきましょう。
料金プランは、月額1,000円以下から10,000円以上と幅広く設定されています。
月額1,000円以下のプランでは住所利用と郵便物転送サービスが利用できますが、会議室を利用できないサービスがほとんどです。
一方、月額10,000円以上であれば、都内の住所を利用できたり常駐スタッフが受付対応したりします。
契約内容によっては、登録料と呼ばれる初期費用が含まれる場合もあるため、契約内容の確認は重要です。
サポート体制
バーチャルオフィスのサポート体制が充実していれば、自身のビジネス活動に恩恵をもたらします。
一部のバーチャルオフィスでは、法務や会計に関する相談も可能です。
また、起業や会社設立に関するサポートもあるため、個人事業主やスタートアップにとって大きなメリットとなります。
サポート体制が充実したバーチャルオフィスであれば、面倒な業務は全てアウトソーシングできるため、自身のコア業務に集中できます。
バーチャルオフィスが適している業種
バーチャルオフィスが適している業種は以下の3つです。
- 個人事業主
- スタートアップ企業
- コンサルタント業
個人事業主
個人事業主にとって、バーチャルオフィスは有益なサービスです。
自宅の住所を公開しなくてもいいので、プライバシーが確保できます。
また、ビジネスの成長段階に応じて、会議室や電話代行サービスが利用できるプランにも変更できます。
事業規模の拡大・縮小が激しい個人事業主にとって、プランを柔軟に変更できる点は大きなメリットといえるでしょう。
スタートアップ企業
バーチャルオフィスは、スタートアップ企業にとって理想的な解決策です。
初期投資が抑えられるため、資金を事業開発に集中投下できます。
IT系のスタートアップ企業であれば、高額な家賃を払わずに都内の一等地にある住所で登記ができる上、会議室も利用できます。
そのため、クライアントとの打ち合わせにも柔軟に対応できる上、ビジネス上の信頼性も担保可能です。
サービスによってはウェブサイトの制作代行も行っているため、宣伝コストも削減できます。
さらに、バーチャルオフィスは他の企業も利用しているため、積極的に交流することでネットワークの拡大にも繋がるでしょう。
コンサルタント業
バーチャルオフィスは、コンサルタント業にも有効です。
クライアント先への訪問が多いコンサルタントにとって、オフィスの維持費は無駄になりがちです。
しかし、バーチャルオフィスであればプランを柔軟に変更できるため、固定費を抑えられます。
また、バーチャルオフィスによっては複数の拠点を持つことも可能です。
そのため、地域を問わずクライアントにアプローチできる利点もあります。
バーチャルオフィスが適さない業種
バーチャルオフィスに適さない業種は以下の3つです。
- 小売業
- 飲食業
- 製造業
小売業
バーチャルオフィスは、従来型の小売業には適しません。
実際の顧客が直接来店できるスペースと在庫管理や商品発送に利用するためのスペースが必要となります。
また、顧客と直接コミュニケーションもできません。
そのため、バーチャルオフィスは有効な手段とはいえないでしょう。
しかし、実店舗を持たないEC事業者にとっては、有効な手段となり得ます。
特定商取引法に基づく表記に必要な住所として、バーチャルオフィスの住所を利用できます。
また、郵便物管理や電話代行を使えば、コア業務に集中できるでしょう。
いずれにせよ、従来型の小売業では、バーチャルオフィスの恩恵を享受できるとは言い難いです。
飲食業
飲食業も小売業同様に、バーチャルオフィスのメリットがあまり感じられない業種です。
そもそも、飲食店を開業するには「飲食店営業許可証」が必要となります。
飲食店営業許可証を得るためには、実際の店舗にて保健所による検査を行わなければいけません。
そのため、物理的な店舗にはなり得ないバーチャルオフィスでは、飲食店営業許可証を取得できません。
ただし、飲食業の本社機能としてバーチャルオフィスを利用することは可能です。
製造業
製造業もバーチャルオフィスには適していません。
大規模な設備や機械が必要な場合、実際にモノを製造する施設が必要となります。
ハンドメイドのアクセサリーといった小さな製品であればまだしも、大きな製品を扱うとなるとバーチャルオフィスの利用は困難です。
小売業同様に、本社機能としての利用にとどめたほうが無難と言えます。
バーチャルオフィスの利用事例
バーチャルオフィスの利用事例として、以下3つの業者を紹介します。
事例1:大手人材サービス会社
ある大手人材サービス会社では、テレワークを導入以降、予期せぬ退職者や体調不良に悩まされていました。
そこで、導入したのがメタバース形のバーチャルオフィスです。
導入後、地方で勤務する社員との距離がなくなり、コミュニケーションが活発化し孤立化した社員が減少しました。
結果、社員のエンゲージメントが向上し、業務効率もよくなっています。
事例2:IT企業
大手IT企業でも、バーチャルオフィスを活用した「合宿」を開催し、コミュニケーションが活発化しています。
合宿では、社員がリモートで集まり、プロジェクトの進行やアイデアの共有を行いました。
バーチャルオフィスを導入した結果、全国各地の社員が参加できる環境が整っています。
バーチャルオフィスにより、プロジェクトの進行がスムーズになり、業績も向上しました。
事例3:医療・福祉事業
医療や福祉業界でも、バーチャルオフィスの利用が有効とされています。
カウンセリング事業専門の個人事業主の場合、住所取得サービスや郵便物管理サービスを主に利用していました。
住所取得サービスでプライバシーを確保し、郵便物管理サービスで雑務をアウトソーシングし、コア業務に集中できるようになっています。
また、事業用に物件を借りなくてもいいため、コスト削減にもつながっています。
事業規模に関係なく、自身のビジネス展開が実現できるのもバーチャルオフィスならではのメリットといえます。
バーチャルオフィスは怪しいに関するよくある質問
最後にバーチャルオフィスは怪しいに関するよくある質問をまとめました。
- 個人で住所を貸すことはできますか?
- 個人で住所を借りて住民登録はできますか?
- 住所貸しで郵便物を受け取ることはできますか?
- レンタル住所を無料で借りることはできる?
- バーチャルオフィスの相場は?
個人で住所を貸すことはできますか?
個人が住所を貸すこと自体は可能です。
しかし、契約内容や利用目的によっては違法となる可能性があります。
自身が住んでいる住所が賃貸物件で、大家の了承無しに住所を貸すと法律違反となります。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
個人で住所を貸す場合は、法律や規制を必ず把握しておきましょう。
個人で住所を借りて住民登録はできますか?
住民票の登録はできません。
住民基本台帳法では、住民票に記載されている住所は実際に本人が生活している場所でなければならないのです。
(市町村長等の責務)
3 住民は、常に、住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うように努めなければならず、虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない。
バーチャルオフィスの場合、居住を証明する光熱費の領収書を出せないため、住民票の登録は不可能となります。
住所貸しで郵便物を受け取ることはできますか?
住所貸しで郵便物の受け取りは可能です。
自分で出向いて受け取ったり、転送サービスを使ったりすれば郵便物を受け取れます。
ただし、転送サービスは週ごとになるため、期限があるものに関しては注意が必要です。
レンタル住所を無料で借りることはできる?
住所の無料貸出は行っていません。
初月無料や返金保証といったオファーもありますが、完全に無料で借りられるサービスは皆無です。
しかし、住所だけ借りるのであれば、そこまでコストをかける必要はありません。
バーチャルオフィスの相場は?
バーチャルオフィスの料金相場は、月1,000円から10,000円以上と様々です。
安いサービスでも、住所取得や簡単な郵便物管理サービスはあります。
一方で、月額10,000円以上であれば会議室の利用や専用のワークスペースが利用できるようになります。
【まとめ】バーチャルオフィスは怪しいは間違い!自分にあったバーチャルオフィスを見つけよう
バーチャルオフィスは一概に怪しいとは言えません。
信頼性の高いバーチャルオフィスであれば、ビジネスの拡大やコスト削減に貢献します。
業者の口コミ、サービス内容、料金を比較検討することで、自分に適したバーチャルオフィスが見つかるでしょう。
逆に信頼性の低いサービスであれば、倒産リスクやイメージダウンに繋がる可能性があるため注意が必要です。
ぜひ、今回の記事を参考に、自分に適したバーチャルオフィスを見つけてみてはどうでしょうか。